経験することを大切に

今回のリモート対談は、小、中、高の同級生で、高校では3年間同じクラスで競い合った!?仲の 平松弘嗣さんです。

國立交通大學應用化學系 副教授

Associate Professor 平松 弘嗣 様

東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了後、岡崎統合バイオサイエンスセンターPD、

2005年8月東北大学大学院薬学研究科助教に。2016年8月國立交通大學應用化學系助理教授を経て、

2020年8月より現職。専門は分子分光学、構造化学、生体分子科学。


(菊池:以下K)

2年前に兵庫県の多可町余暇村公園で会って以来ですかね? お久しぶりです。

台湾の大学について教えてください。


(平松様:以下H)

大学は、台北の新竹市にあります。新幹線で行くと、台北、板橋、桃園の次です。

大学としては台湾大学が一番で、新竹にある交通大学、清華大学と

台南にある成功大学が第二グループになります。


(K)

大学のスタイルは日本と結構違いますか?


(H)

まず授業は英語で行っています。中国語は無理なので(笑)

台湾の学生は人懐っこい感じがします。先生と学生の挨拶もフレンドリーです。

ただ研究となるととても真面目で、返事がすごく良いです。

大学が4年制で大学院が2年制というのは日本と同じですが、

4年間は講義のみで大学院に進んで初めて実験を行うようになります。

ただ、就活に時間を割かれるということはなく、修了(卒業)後に就職活動を行うので、

日本のように集団で入社するというスタイルではありません。


(K)

就活しながら卒論(修論)のテーマを進める日本とは違って、学ぶ人には良いシステムですね。

私は10年以上前になりますが、桃園や台中にお客様があり、新商品のプレゼンや

製造の立ち上げで結構な頻度で訪問しました。

中国語は全くでしたが、親日の方が多くて特に困ったこともありませんでした。

といっても、ホテルー工場ーレストランーホテルの繰り返しでしたが、、、


台湾の進物用菓子で初めてゼリーやプリンなどの水菓子を商品化した際には、

全土の店長を集めた商品説明会で挨拶することになり、カメラのフラッシュを浴びながら、

カタコトの中国語で自己紹介しました。

台湾のCVS向けに当時日本でも流行した0カロリーゼリーを手がけたこともありましたね。

料理も美味しく、台湾には良い印象ばかりです。

ただ、コンビニ入った時の独特の匂いと、隣で臭豆腐の鍋が始まらない限りは、、

コロナが落ち着いたら家族を連れて行きたいと思っています。


(H)

コロナで言うと、台湾では帰国者の感染者を除くと250日間

国内感染者が0でした(2020年12月時点)。

台湾も日本と同じ島国ですが、以前SARSやMARSの際に

国内で蔓延した経験から、極めて早くに対策を行いました。


(K)

それでは、研究内容について教えてください。


(H)

分子の構造を研究する、構造を調べる方法の研究を行っています。


(K)

私達がわかるレベル、身近なところで言うとどんな応用があるのでしょうか?


(H)

例えば、果物に光を当てると糖度がわかり、血管に当てると血糖値を測定することができます。

散乱光の簡単な応用で言うと、マグロの刺身に光を当てることで、

タンパク質と脂質の信号の比率を求めて、ここは赤身ここはトロということがわかります。


医療への応用として、癌細胞を発見することに利用されています。

従来は、体を切り開いて、疑いのある細胞の一部を切り取り検査し、

その結果から見た目に明らかにそれとわかる部分を切除すると言う方法ですから

完全に取り除くことが難しいのですが、光を当てて正常細胞と癌細胞の違いを調べることで

より適確に取り除くことが可能になってきています。


(K)

この技術で、例えば農家が野菜や果物を出荷前に光を当てるだけで

収穫時期を確認したりできるようになるのですか?


(H)

将来的にはなると思います。対象物が大きくなると光が透過しなくなるので、

ある程度の大きさや、表面付近に限定されると思います。


(K)

この研究は学生の頃からやっていたのですか?


(H)

初めは本当に小さな分子レベルでした。今は精製したタンパク質のサイズを研究しています。


分子は振動しています。振動している分子に光を当てると分子の振動と構造がわかります。

光を当てて目に見えないものを分析するという事に興味を持ちました。

自分で考えて手を動かして、何かを作る、論理を作る、機械をつくるってことが面白いですね。


(K)

理論を考えるだけでなく、機械を作ったりすることもあるということは、

科学者という部分だけでなく、エンジニアをいう要素もあるのですね。


(H)

新しい考え方、理論を構築し、新しい機械を作って測定することが求められます。

ブラックボックスを使って測定をしてもブラックボックスの中身がわからないと

得られたデータを正しく理解することができません。

測定装置を理解することが大事ですから、一番良いのは自分で作ることです。


(K)

古来アニメに登場してくる「博士」みたいなもんですね(笑)


(H)

子供の時に蝋燭の火で竹を曲げたり、水鉄砲を作ったりした経験が活きています。

手を動かして何でもやってみるということ、経験することを大切にしています。


(K)

研究の毎日で、何かストレス発散にしていることはありますか?


(H)

煮詰まった時は散歩しながら、少し距離をおいて考えてみるようにしています。

あとは料理をすることですね。


(K)

料理するイメージは無かったですね(笑)


(H)

料理は化学実験ですよ(笑)


(K)

そうですね(笑)

私は遠距離通勤していた頃は、ほぼキッチンに立つことはありませんでしたが、

今は、ほぼ毎日料理作っています。

クックパッドを見たりして、この工程はなぜ?

大さじ1杯って何グラムか測ったりしています(笑)

台湾料理も作れるの?


(H)

何回か作ったことはありますよ。八角というスパイスが独特ですね。

臭豆腐も美味しいよ(笑) 


(K)

・・・(臭豆腐が苦手なので)

日本から離れて思ったことはありますか?


(H)

日本には歴史があるということです。

古くは万葉集に始まる記録や、神社やお城などの遺跡など、

かなり古いものから存在しています。

原住民の記録を除けば、台湾には西暦1600年頃からの歴史しか残っていません。

台湾にはiphoneに利用されている半導体などの

優れた技術がありますが、台湾ブランドとしては知名度が低いです。

ただ、電気自動車が街中をたくさん走っていたり、

新しいモノを取り入れることに躊躇がないです。


(K)

新しいことに目を向けることはとても大切ですよね。

私は食品の素材だけでなく、食品機械など広くアンテナを張って、

こっちの情報とあっちの情報を引っ付けたり、切り離したりして空想しています。

それを人と会話したり情報共有することで、

どんどんイメージが具現化されていくことが楽しいですね。

また訳のわからんような問い合わせを突然するかもしれませんが、

その時は是非よろしくお願いしますー


(H)

大歓迎ですよ〜