自然の循環の中で共に暮らす

大学の後輩であり、弊社のリフォームを担当してくださった

一級建築士事務所わびすき 代表 奥田 智恵子さん。

工事の真っ只中、お話をさせてもらいました。


(菊池:以下K)

まずは、ユニークな会社名について教えてください。


(奥田様:以下O)

「わびすき」は、日本の侘び寂びの「わび」と数寄屋建築の「すき」を組み合わせています。千利休の茶の湯の理念から、豪華絢爛に飾るのではなく、身の回りにある質素なものを工夫して美しく暮らす、日本ならではの引き算のデザインを広めていきたいと思ってつけました。


(K)

私の前職は主に和菓子の原材料を製造・卸を行ってまして、入社する際に社長から「洋菓子は足し算、和菓子は引き算」という言葉を教えて頂きました。いかに素材の良いところを残してシンプルな原材料で美味しいものを作るかが職人の技量だと。それ以前の会社で、食品添加物の研究開発を行っていましたので、衝撃的なフレーズでした。


(O)

衣食住含めて、日本の文化なんでしょうね。

大学で建築を学んでいたのですが、3回生の時にこのまま卒業するのは嫌だと思い、1年間休学したんです。そして、世界一周をバックパックで旅するというのやりまして、いろんな国のいわゆる教科書に載っているような建築を見て周りました。

一番心に刺さったのが、東南アジアや途上国で見る自然の中に慎ましやかに建っている建築物で、そこで暮らしている人達の生活も自然の中に循環し、溶け込んでいることに衝撃を受けました。

現代の日本の生活がいかに自然と乖離しているのかを目の当たりにし、本来心地よいお家というのは、風や水、太陽などの恵みをありがたくいただいて、抗うことなく自然の循環の中で共に暮らすような家なんだろうと感じました。

ですから、天然素材、草屋根などを得意とする設計事務所に就職し、14年前に独立しました。


(K)

結構早くに独立されたんですね?


(O)

一人目の子供ができて産休中に勤めていた工務店が倒産し、戻るところが無くなってしまいました。設計の仕事は、土日とか夜遅くとか結構過酷な時がありまして、赤子を抱えたまま転職した場合、入った先で迷惑をかけ倒すやろなーと思い、独立を決心しました。


(K)

スタッフが全て女性ですよね?


(O)

意図的ではないですが、現在は女性6名です。男性もウェルカムですし、男性が働いている時期もありましたので、そんなに意識はしていませんが、、、私が働きやすい会社を作りたかったです。

子供を抱えたままやらないといけなかったですし、子供が3人いますが、産休することなく働いていました。超フレキシブルに働かないと、とてもじゃないとやっていけませんので、、、弊社は、完全フレックスで、在宅勤務になります。打ち合わせの時だけ、現地で落ち合う形です。また何時間、何日働くかも自分で決めることができます。


(K)

実は、弊社も3年目になり、ぼちぼち一緒に働いてもらえるパートナーを探さないといけないなと考えているところなんです。こちらも在宅勤務にリモートで打ち合わせ、フレックスタイム制になると思います。例えば、以前は食品会社の開発をやっていたけど、現在は主婦をしてて、家で時間がある時にお菓子を作ってみたい、そこに対価として報酬があれば尚良しって感じの人や、今流行りの副業人材など。私と同じような方と業務提携してもいいと思っています。


(O)

ちょっと子供が熱出したから、リモートで会議参加するとか、大抵の場合はなんとかなりますね。新築物件の場合は、2人体制でやっているので、どちらかの都合がつかなくなっても対応ができます。菊池さんのお仕事だったら、女性の人も働きやすい形にもっていけますね。

基本的に成果報酬なので、いくらで受けた仕事をいくらでいつまでにやるか決めるので、あとは期限内に早くやってしまってゆっくりするか、個人の裁量に任せています。但し、間に合わないと分かった時点ですぐに「誰か助けて」って言うようにして、6人いるので誰かがサポートできるようにしています。


(K)

と言うことは、今ちょっと稼ぎたいって時はたくさん仕事をすれば良いし、自分の時間を大切にしたいなって時は仕事をセーブすることが出来るってことですよね。理想的な働き方ですね。


(O)

やはり長く働いてほしいですからね。

実は、今年の10月に兵庫県稲美町で余剰建材のリユースショップをオープンすることになりました。


(K)

先日クラウドファンディングしていたのはそれですか?


(O)

そうです! よくご存知で。


(K)

いや〜、すごいなって感心していました。そんなプロジェクトを立ち上げてみたいな、と思っていますが、なかなかに行動力が必要でしょう?


(O)

本当は誰かにやって欲しかったんですよ。余剰建材って結構出るんですね。食品業界でも食品ロスの問題がありますが、日本の場合は工期が厳しくて、いつまでに引き渡さないとペナルティみたいなことが多くて、ちょっと多めに材料を発注するというのが一般的なんです。

ですから、通常の戸建てでもちょっと余りますし、ビルなんかだと結構な量が余ります。またそのために用意したタイルだと、他で使えないので廃棄するか、しばらく倉庫に保管していつか使うと思いながら結局廃棄するってことが、全国の工務店さん、材料屋さんで起こっています。

ずっと「もったいない」って思っていたので、懇意にしている工務店さんから、ちょっと余った資材をうちの倉庫に入れてもらい、お客さんにご提案していました。

ゴミを減らしたいよね、廃棄するにもエネルギーかかるよねと話すと、トイレの床だけとか壁の一部にアクセントとしてとか、うちは倉庫代が出ればいいという考えでかなり安くお譲りしているので、お互いがウィンウィンになりますよね。

これをもう少しスケールアップしてみたいなと考えていたし、どこかの工務店さんがやってくれたら良いのになと思っていましたが、実際にはなかなかなので、自分がやるしかないと思い、古民家を改築してお店にしようと今春から動き出しています。


(K)

それって、全国にも大量に余剰建材があるってことですよね?全国にネットワークを作って運営できればとても意義があることですよね?


(O)

まさにジモティー店舗版、建材版みたいなもので、行って実際に見れるということが全国に出来たらいいなと思っています。2、3年くらいでそれを運営する人がある程度食べていけるように収益が出れば、副業でやってみたい、本業でやってみようという人が出て、事業化したいなと考えています。

地域によって事情が異なると思いますが、こういう物を売ったらいいよとか、こんなイベントしたら盛り上がったよとか、みんなで情報を共有して、全国に広がり、少しでもゴミが減れば良いなと思います。


(K)

食品の廃棄ロスの問題は、結構メディアでも取り上げられてますが、建築業界にもあるんですね。


(O)

どこの業界でもあると思いますね。今アップサイクル商品というのか注目されていて、リサイクルというのは実は建築建材でも進んでいて、97%が再利用され燃料や舗装材などに生まれ変わっていますが、本当はそのまま再利用されたら一番良いですよね。それがリユースになりますが、例えば柱に使っていた材木を加工してペン立てにするとか、違う用途に使うことをアップサイクルと言います。このアップサイクルにも力を入れています。


(K)

かりんと饅頭みたいなもんやね。

確かに食品業界でも廃棄するよりは、飼料や肥料に使用するなどの動きはありますが、本当はもっと付加価値をつけて売れるようにしたいですね。今、急に口がモゴモゴしていますが(笑)、そんな取り組みのお手伝いをしているところです。

やっぱりウィンウィンにならないと意味がないですからね。


(O)

そうなんですよ。そんな良いことしているんだから買ってあげよう、ってなかなかならないんですよ。だから廃材でもデザインにこだわって、工夫して、むしろこっちの方がカッコいいやん!ってなるような仕掛けを創っていけたらと思っています。


                        つづく


一級建築士事務所わびすき https://www.wabisuki-arc.jp/